静岡県には挑戦を受け容れる文化・土壌がある

川勝 平太氏|静岡県知事

広大で美しい土地に、バリエーション豊かな産業が根付いている

——7月24日・25日の2日間、静岡県静岡市の静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ)にて開催される「TECH BEAT Shizuoka(テックビート)」。静岡企業と先進スタートアップのマッチングによってイノベーションを生み出すイベントです。今回は静岡県が産業に関してどのような取り組みを行っているのか、静岡県の川勝知事に伺います。

静岡県は、東西約150km、南北約120kmと広大で、海あり山ありで、美しい絵のような景観に恵まれており、農林水産業・製造業・金融業・サービス業など多彩な産業が満遍なく揃っています。

県東部には、富士山や伊豆の温泉など、魅力的な資源を生かして、観光・美・健康に関わる産業が活動しています。県は「ファルマバレープロジェクト」(医薬品・医療機器・化粧品の産業クラスター)を進めています。県内の医療機器は3,000~4,000億円程度、医薬品は6,000億円前後、化粧品は全国で常に3位以内に入るレベルの産業規模で、合計すれば1兆数千億円と、全国1位の産業規模を誇ります。

一方、食糧生産では、県の農作物339品目、水産物を入れると439品目で、ダントツの日本一です。今年の静岡茶市場での新茶初取引では1kgあたり139万円の値をつけた最高品質のお茶をはじめ、メロン、みかん、いちごなど高品質な「農芸品」が豊富です。静岡はまさに「食材の王国」。食材を「食の都」づくりに生かすとともに、「健康」と結びつけ、医食同源を推進しているのが「フーズ・サイエンスヒルズプロジェクト」です。静岡県立大学を中心に県中部で取り組んでいます。

県西部には、スズキ・河合楽器・ヤマハ発動機といった世界的な企業が活躍しています。昔から「やらまいか精神」といってイノベーションを起こす元気な文化が根づいています。これからの時代を担うのは「光」技術になると見込んで、その拠点「フォトンバレーセンター」を設置し、研究開発に力を入れています。

──それぞれの地域に特色ある産業があり、さらにそれを県として推進していく拠点も用意されているんですね。先進技術の導入にも積極的と聞いています。

本県の多彩な産業へのICTやAIの新技術の活用は、県が重点的に取り組んでいる実践課題です。モビリティの観点では、EV(電気自動車)化と自動運転の技術に主眼を置いた実証実験を行っています。「しずおか自動運転Show CASE (Connected  Autonomous  Shared&Services  Electric)プロジェクト」では、既に十数社が参画し、県の小笠山総合運動公園において自動運転の実証実験を行っています。また、自動運転の走行データの元ともなる3次元点群データについて、東京急行電鉄株式会社と相互利用に関する連携協定を締結し、自動運転の実証実験や観光PR、インフラ維持管理の効率化などに取り組む予定です。

先進技術の流れは「情報から生命へ」と見ています。その見通しに立って、生命資源に関わる「一次産業ルネサンス」を進めています。2017年、沼津市に革新的な栽培技術開発や品種開発を実施する先端農業推進の拠点「AOI(Agri Open Innovation)- PARC(Practical Applied Research Center)」を設立しました。理化学研究所、慶應義塾大学SFC研究所などの研究機関と多くの企業が連携し、農芸品の科学的な解析を行っています。農芸品の量産化や安定供給をも目指し、最先端のICT・AI・光技術を用いて生育をコントロールし、成果もすでに現れて、今後は販売に結びつける計画です。

微生物や藻などの海洋生物資源については、「MaOI(Marine Open Innovation)- PARC」を、清水を中心にしたネットワーク化の拠点として整備中で、2020年秋までに稼働を始めます。駿河湾の水深は最深部が2,500m、もちろん日本一。珍しい深海魚など、駿河湾にしかいない魚介類が多くいます。海洋生物資源は、食品はもちろん、創薬、エネルギーなどへ資源化し、静岡発のマリンバイオ産業の創出を目指します。

静岡県は「挑戦できる場所」

── ビジネスを起こす上では環境も重要ですよね。静岡の環境について教えてください。

静岡県は、富士山、伊豆半島、南アルプスなど世界クラスに認定されている絶景があり、茶畑、わさび田はともに世界農業遺産。駿河湾は世界で最も美しい湾に認定されています。言うなれば絶景空間で「海と山の風景の画廊」です。

富士山静岡空港は、霊峰富士、南アルプス、広がる茶畑、眼下の駿河湾など日本随一の景観に囲まれ、海外の国賓にも選ばれています。このような「絶景空港」は日本のどこにもありません。10年前に開港しましたが、地方管理空港の中では外国人出入国者数は開港当初から日本一。航空学校やホテル建設の要望も出てきました。空港直下に新幹線が走っており、新駅の設置も想定内です。日本一美しく利便性の高い空港としての発展が期待されています。

海外のお客様が急増しているのは空港だけでなく、清水港もそうです。ゲンティン香港という世界有数のクルーズ船会社が、清水港を「これほど綺麗な景観の港はない」とのことでクルーズ拠点形成に関する協定を締結しました。クルーズ船は、清水港のほかに船舶の規模によって御前崎港も田子の浦港も利用できます。

また、インドのIT企業ZOHOの社長が、大井川上流の川根本町を訪れた際のエピソードがあります。彼は「遠景には雪も見え、お茶は美味しい、水は綺麗、治安はいい、人も優しい、天国だ!」と言って、その場でZOHOの新オフィスの設置を決めました。川根本町は森と川の自然豊かな地域ですが、ブロードバンドが通っていますから、情報インフラには困りません。静岡県下のブロードバンド世帯カバー率は約98%です。

私たちは常に防災の観点を忘れません。県は「スマートガーデンカントリー“ふじのくに”」と銘打って、防災を柱に、観光・インフラ整備など様々な分野への活用を目指し、「人のため」を合言葉に、どうすれば医療・福祉・買い物を皆様に快適にコンパクトに提供できるかを研究中です。

──産業、環境について教えていただきました。ビジネスに欠かせない「人材」についての施策もお聞かせいただけますか。

施策の最大の柱です。人材の育成・確保は子育てから高齢者の「生きがい」まで、いわばアルファ&オメガです。具体的には、例えばUIターンの促進についても育成と確保の両面から考えており、学校を卒業して県外・国外に進学や就職して、外の世界を見るのは大切です。中・高校生は地域についてあまり知りません。人生には必ず転機がきます。結婚相手と出会えば、相手の両親に会い、また自分の両親のことも考えます。二人で住む場所も検討し、住宅ローンも組むことにもなるでしょう。そういった人生の転機の選択肢で静岡県を選んでもらえる環境づくりをしています。「30歳になったら静岡県!」はそのキャッチフレーズです。若者が30歳前後で一人前になるとき、「そうだ、富士山、静岡だ!」と、夢を提供する環境づくりです。

働くということは、その地域に住まうことです。ライフスタイルについても「庭屋一如」の考えで、建物・庭(環境)を一体的に造成し、借景を考慮した「ガーデンシティ」づくりを進めています。個人住宅にも集合住宅にも緑を入れ込む「農芸都市」と言える「美しい生活のまちづくり」を目指しています。

──「TECH BEAT Shizuoka」に参加するスタートアップ企業にメッセージをお願いします。

静岡県は選ぶに値する「富士の国(ふじのくに)」です。国籍・宗教・文化を問わず差別されず、だれもが努力すれば、夢がかなうDreams come true in Japanの拠点となる、いわば「ドリカム・ランド」を目指しています。「住んでよし、訪れてよし」「学んでよし、働いてよし」「生んでよし、育ててよし」「生まれてよし、老いてよし」の「”ふじのくに”」へ、どうぞお越しください。

インタビュアー:西村真里子 (HEART CATCH)

文:鈴木亮一/構成:細越一平 (Story Design house)

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