スタートアップとの対話から生まれる化学反応を期待する

矢﨑 陸氏|矢崎総業株式会社 専務取締役

ワイヤーハーネスを主軸に、「つなぐ」観点から様々な事業を展開

——はじめに、事業内容をご紹介ください。

私たち矢崎グループの事業は大きく分けて3つに分類されます。一つ目は「クルマをつなぐ」事業。これは自動車用組電線、車の神経にも例えられるワイヤーハーネスを中心とした自動車部品に関する事業です。特にワイヤーハーネスは、世界でもトップクラスのシェアを有する当社の基幹事業です。二つ目が「くらしをつなぐ」事業です。電線、ガス供給機器、空調や太陽熱利用機器などの環境システム機器、そしてタクシーメーターやデジタルタコグラフなど自動車の運行管理を行う計装機器などです。そして最後に「社会をつなぐ」事業として、介護や農業、環境・リサイクルといった新規事業を推進しています。

——今回取材をするにあたり事前に貴社の製品や設備、職場環境などをご紹介いただいて、大変感動しています。主力事業はもちろんのこと地域のニーズにあわせて農業・介護を手がけたり、海外従業員の家族も含めた国際交流を積極的に行っていたり。社会や世界、地球とつながる仕組みがありますよね。

私たちは「世界とともにある企業」「社会から必要とされる企業」を社是としています。これまでお世話になった地域に対して、地域ならではの課題を解決するために取り組んでいるのが、先に挙げた新規事業です。高知県梼原町で実施している木質バイオマス地域循環モデル事業は、サステイナブルな社会を作るチャレンジの一つと位置づけています。

共創の可能性はMaaSや自動車関連に限定しない

——現在課題と感じていることを教えてください。

私たちの主要なお客様は自動車メーカーです。世界中のほぼすべての自動車メーカーと取引しています。まず自動車メーカーがあり、ディーラーがあり、アフターマーケットがある。主力事業であるワイヤーハーネスを私たちが直接エンドユーザーに供給することはありません。そのようなビジネスモデルだと、これからの時代に必要とされている「モノ」ビジネスから「コト」ビジネスへの発想の飛躍がなかなか難しいのです。最近取り沙汰されるMaaS (Mobility as a Service)についても、「部品メーカーとしてMaaS時代に対してどのように挑戦するべきか」という問いに直面しているのも事実です。

——デジタルトランスフォーメーションについてはどのように捉えてらっしゃいますか?

ビッグデータはすでに蓄積されています。我々の製品であるデジタルタコグラフ、タクシーメーターやドライブレコーダーなどの計装機器は運行データを容易に収集できます。私たちの計装機器を取り付けているのは、タクシー、バスやトラックなどの商用車ですから、土日しか動かない自家用車と比べて稼働率も高く、そのデータ量も膨大です。ガス機器なども同様です。約35%のシェアを有するガスメーターは、各家庭の使用状況のデータを集中監視し、LPガスの交換時期などを把握できます。こうした分野はスタートアップとの連携が考えやすいかもしれませんね。

——MaaSや自動車にとどまらず、幅広い領域のスタートアップと共創する可能性もありそうですね。

スタートアップの皆さんが持っている先進的な発想に基づいて、対話を重ねることで、不思議な化学反応が起きたら面白いと思っています。自分たちだけで全てやることには限界がありますからね。

歴史に培われた技術への信頼性が、スタートアップへの価値となる

——自動車や宇宙ロケットなど今まで大企業しか手がけられなかったプロダクトに挑戦するスタートアップも出てきています。

実はそういった、自動車関連スタートアップに対応している組織が、米国にあります。

——そうなんですね!

基本的には一般車と同じ部品を提供していますが、従来とは異なるアプローチをしなければならい局面もあります。私たちの製品の信頼性を培ってきた歴史、78年間の学びをベースにスタートアップと連携することも重要な役目だと思っております。

——最後にスタートアップと静岡企業がマッチングを行う7月24日、25日の「TECH BEAT Shizuoka(テックビート)」に来場するスタートアップ企業にメッセージをお願いします。

5Gが普及しデータの伝送量が飛躍的に増加する社会に向けて、データの制御系含めて先進的なアイディアや即時性のある技術を持っているスタートアップに興味があります。また、当社としては、軽量化や省スペース化に関するテクノロジーは常に必要としています。本日ご覧いただいた高級車用のワイヤーハーネスは、電線を一本につなげると、クルマ一台分で富士山を越える3,800メートルにもなるんです。電力や情報を伝達するワイヤーハーネスをさらに軽量化し、各種部品の省スペース化が実現できたら、未来の車の形状も変わってくるかもしれません。自動車業界は今、100年に一度の大変革期と言われています。この大変革期に対し、多様化するニーズを実現するための技術が求められています。「TECH BEAT Shizuoka」では、固定観念に囚われないユニークなアプローチのスタートアップの皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。

インタビュアー:西村真里子(HEART CATCH)

文:細越一平(Story Design house)

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