環境問題に向き合う志を持ったスタートアップと出会いたい

齊藤 了介氏|大昭和紙工産業株式会社 代表取締役 CEO 紙で環境対策室長

環境問題の解決に向けて、紙が担えるものを考えたい

──まずは、貴社の事業内容をご紹介いただけますでしょうか?

簡単に言えば、「紙加工屋」です。紙袋の製造をメイン事業としつつ、一方で1万円する高級カラーティッシュを作ったりもしています。この高級カラーティッシュは「世界一高価なボックスティッシュ」としてギネス記録に認定されました。他にもいくつかの事業領域がありますが、基本的に「紙」という森から生まれる素材を使ってものづくりをしている会社です。

──現在、力を入れている事業はありますか?

会社としてフォーカスしているのは「環境問題の解決に向けて紙が担えるものは何か」ということです。2019年6月末には、持続可能な循環型製品で紙化を推進し、新しい取り組みにチャレンジする「紙で環境対策室」を新設しました。

──近年、使い捨てプラスチック製品などを制限する動きが広まっているように感じます。最近では、ユニクロさんが環境配慮のためにレジ袋を紙袋に切り替えると発表しましたよね。

そういった動きが広まった背景には「海洋汚染への意識の高まり」がありますよね。プラスチックは化学的に結合されているため、自然に分解されません。社会的に「脱プラスチック」が唱えられるようになっています。 一方で、再生可能な資源である木を原料とする紙も、昔は「木を切るから環境に悪い」とバッシングを受けていました。ほとんどの製紙メーカーが積極的に植林事業を推進していますし、今は計画的に森林を伐採する間伐材の風潮も広まっています。

──紙とプラスチックは、歴史的に相補的な関係にあるようですね。

40年ほど前は、国内スーパーのテイクアウト用紙袋のシェアのうち6〜7割を当社が担っていました。そこにポリ袋という黒船がやってきて、当社は大打撃を受けたという歴史があります。現在は社会全体が「プラスチックの便利さを知ってしまったからもう離れられない」という状態ですよね。

──「紙で環境対策室」としては、そういった問題に取り組んでいくということでしょうか?

プラスチックの機能を紙製品に切り替えるためには、プラスチックに代わるような加工をして機能を補わなければならないことも多いです。できる限り石油化学製品ではないものを加工に使うなど、環境に配慮した取り組みをどんどんやっていかなければなりません。 もう1つの論点としては、現在取り上げられている社会問題を解決するといったときには、すでにあるものを少しの我慢とともに享受するという概念があってもいいと思います。

地域間の情報格差を解消するために必要なこと

──スタートアップ企業との協業を考えたときに、課題に感じていることはありますか?

僕は東京のオフィスにいることが多いのですが、地域間格差の大きさは正直感じますね。こう言ってしまうと社員に怒られてしまうかもしれませんが、やはり東京と静岡では、情報量がかなり違います。その格差を解決するために、情報のボトムアップというのが絶対に必要です。

──そういった格差を感じるなかで、視点を静岡から東京、さらには世界へと持っていくためには、どんなことが必要だと思われますか?

「感度の高さ」だと思います。感度が低いと、今回のTECH BEATのようなイベントでも、海外視察でも、ただ見学するだけで行って終わりになってしまうのではないでしょうか。実際にワクワクしたり、自分で見たり聞いたりしたものにエネルギーを感じないと、モノにするのは難しい。また、静岡から世界に、となった時には「言葉の壁」も大きなハードルですね。

目指すは環境汚染解決企業

──現在、社外との取り組みの事例はありますか?

アイデアブレストのような段階も含めると、ここ最近増えてきていますね。当社のテクノロジーを脱プラスチックの施策に使えないかと、テクノロジーの棚卸をしている大手企業から問い合わせをいただくようにもなりました。

──スタートアップと協業の実績はあるのでしょうか?

今のところ、スタートアップ企業と協業した実績はありませんが、ぜひ積極的に提案していた だきたいですね。例えば「紙の厚さを20%減らします」とか、具体的な提案をいただけると嬉しいです。

──どんなスタートアップに出会いたいですか?

脱プラスチックなどの環境問題に対して社会的意義を感じているスタートアップには、非常に興味があります。スタートアップの方々は、プログラミングを駆使してより便利になるテクノロジーを作っている会社が多いイメージがあります。どうしても議論がPCの前になってしまう。 でも、PCと向き合っているときよりも、実際の生活のなかにある不便なことにニーズは存在すると思うのです。そういった生活での不便に気がついて「なんとかしたい」と思えるスタートアップ、そこから例えば「環境問題を解決したい」という志に連動していくスタートアップとは是非ともお会いしたいですね。

──これから、どういったことに挑戦していきたいですか?

プラスチック製の袋が浸透しているなかで脱プラスチックが唱えられはじめると、次の新しいテクノロジーを探そうとしがちですが「それなら紙袋に戻ればいいよね」というシンプルな提案はしていきたいです。
そこで特に問題になってくるのが、紙袋の「かさばる」という性質。現在もどうやったらかさばらない紙袋を作れるのか、試行錯誤を続けています。紙袋がポリ袋にとって代わるためには、ほかにも技術面やコスト面などさまざまな問題があります。今後もトライアンドエラーを繰り返しつつ、社内のデザインチームやマーケティングチーム、開発チームで協力して取り組んで いきたいですね

──最後に、今後のビジョンについて教えてください。

当社の主力製品は紙袋ですが、ただの紙袋屋、紙加工屋ではなく「環境汚染解決企業」を目指そうとしているところです。今後は社会全体の脱プラスチック化の後押しをしていきたいです ね。

──社会課題に向き合うスタートアップとの協業が実現したらどんなシナジー効果が生まれるのか、今から楽しみです。ありがとうございました!

インタビュアー:西村真里子(HEART CATCH)

編集・構成:細越一平(Story Design house)

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