変化に対応するスピードを、スタートアップとの接点から見出したい

鶴見 知久氏|株式会社スクロール 取締役社長

縫製業から通信販売に繋がる、大胆な組織へのアプローチ

──貴社の事業内容について教えてください。

現在、当社は7つの事業セグメントで経営を推進しています。具体的には、通販事業、eコマース事業、健康食品と化粧品を合わせた健粧品事業、ソリューション事業、旅行事業、海外事業、そして物流を中心にグループのインフラを支えるグループ管轄事業です。売上の約半分を占めるのは通販事業で、次いで規模が大きいのがソリューション事業です。2019年7月現在、グループ連結21社で、DMC(ダイレクトマーケティングコングロマリット)複合通販企業を推進しています。

──7つの事業というと、非常に幅広いですよね。今の業態に至るまでには、どんな歴史があったのでしょうか。

創業は1939年で、今年は創業80周年となります。もともとは、ミシン6台からスタートした縫製業です。製品を自ら売り始め、通信販売の形態に発展していった歴史があります。それが現在の通販事業やeコマース事業の原型になっています。

──通販カタログなどが存在しなかった当時、どのように通信販売を始めたのでしょうか?

通信販売のはじまりは、浜松市の婦人会からのリクエストに応えて開発した「トッパー」という商品です。着物の上にさっと羽織ることのできる商品で、浜松市の婦人会で直接販売を開始したところ、その手軽さからたちまちヒットし、全国の婦人会へと直接販売を拡大していくきっかけとなりました。その婦人会との関係を足がかりに、他団体へもチャンネルを広げ、オートバイを駆使した出張員(セールスマン)による販売促進を開始しました。つまり、最初は人を介して無店舗販売をおこなっていたのです。それが時代の変化とともに、人を介さない代わりに紙というメディアを通して届けるカタログ通販に、さらにインターネットを通して届けるeコマースに発展していきました

──「どのコミュニティに対して売っていくかを考える」という現代のコミュニティ論に通ずる部分がありますね。

当社のDNAでもあるのですが、組織的なところと組むビジネスは得意です。コミュニティ(組織)やメンバー会員の方々に商品を提供するだけでなく、一連のビジネスそのものを作りだすモデルは、今も生きていると感じますね。例えば、現在、当社の基幹事業である通販事業も、全国の生協をはじめとした組織会員向けのビジネスです。

時代の変化に対し、積極的に対応し続けることで、今のビジネスモデルに

──M&Aにも積極的だとうかがいました。どういった背景があるのでしょうか?

紙のカタログから、インターネットの普及によるeコマースへの時代の変化です。インターネット専門の通販会社によって、紙のカタログが駆逐されていくようになったのが2010年頃。それ以前から当社もインターネット通販に取り組んではいたものの、自分たちの力だけではインターネットビジネスに対応しきれませんでした。カタログ通販の特性上、半年から1年先の発行計画を立て、逆算して進めるビジネスモデルです。即時性に優れたインターネットには対応しきれませんでした。

──自分たちだけではeコマースの専門業者にはなりきれない、と。

インターネット通販では、インターネットでの販売を前提としたビジネスモデルでないと勝てないと悟ったことが、M&Aに繋がりました。自分たちだけで対応できない部分は、インターネットのプレイヤーを取り込むことで、時代の変化に対応したのです。

──時代の変化に対応したくとも、なかなか本業を変えられない企業も多いという話も耳にします。

当社が変化に対応できたのには、ビジネスが一本足打法ではなかったというのも影響しています。基幹事業である通販事業を見ても、組織を対象とした通販事業、紙カタログでの個人通販とさまざまな業態を持っていました。もしカタログ通販事業のみで成り立っている会社だったら、事業を縮小したり変更したりするのは難しかったでしょうね。

──複数の事業モデルを持っていたからこそ、時代の変化に合わせた転換ができたのですね。

ここ30年でも、当社はメインのビジネスが2回変わっています。1回目は、平成元年頃。セールスマンを介しての通販から紙の通販に変わったとき。2回目は、現在の基幹事業となっているBtoBtoCのビジネスに変わったときです。通信販売という業態の変化の速さを表しているかも知れませんが、迫り来る時代の変化に対して積極的に対応してきた結果が今の当社の姿になっています。

──グループ間のやりとりは活発ですか?

グループ間の風通しは非常にいいですね。例えば、最近当社にグループ入りした「もしも」というスタートアップ企業があります。デジタルマーケティングに長けた会社で、その広告手法がeコマース事業などで活かされています。ノウハウに関してはお互いに積極的に共有しています。グループの経営資産を全体で有効活用していると言えます。

──激しい時代変化のなかで、直面している課題はありますか?

当社は、通販事業者をサポートするソリューション事業を提供している一方で、メイン事業はアパレルや化粧品などのモノを生み出し、ブランドを生み出し、それをお客さまに届ける物販の事業です。その観点から人口減少に起因するマーケットの縮小は大きな課題です。
激しい競争と淘汰の時代ですから、縮小する市場で、プレーヤーみんなが同じ規模を維持するのは不可能です。人口減少は労働力にも影響しますから、テクノロジーによる業務効率化・最適化を進めつつ、いかに新しい商品や価値を提供していくかを考えていかなければなりません。

急成長のソリューション事業に多くの可能性

──デジタルトランスフォーメーションの取り組みについてはいかがですか?

技術の進化が、いわゆる効率化や最適化のために使われるという時代の流れでは、当然、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みが必要です。例えばRPA、テクノロジーの進化に伴ったオペレーション業務の改善というところには、私たちも積極的に取り組んでいます。

──貴社からスタートアップに対して提供できるメリットがあれば教えてください。

ソリューション事業における「BtoB」、eコマース事業や健粧品事業などにおける「BtoC」、通販事業における「BtoBtoC」という3つのビジネスモデルがあります。
多様なビジネスモデルがあるため、スタートアップとの接点はかなり幅広いと思います。現時点でどこに協業の可能性があるかわからなくても、接点をもっていくなかで、当社ビジネスの様々な活用の仕方が見えてくるのではないでしょうか。

──21社ある中でも特にテクノロジーやスタートアップと親和性が高いと思われる領域はありますか?

最近急成長している、通販の仕組みづくりや物流サービスを提供する「ソリューション事業」と考えています。
私たちは通販の会社として発展を遂げてきましたから、通販に関するインフラ周りやシステム周り、物流までを全て自前で構築してきました。今でこそ楽天市場など簡単にインターネット通販を始められる仕組みがありますが、それを随分前から自前でやってきたのです。2000年頃にインターネットモールとして登場した会社が直面したのが、まさに物流の問題でした。そこで、当社が積み上げて来た通販のノウハウを他社に提供しはじめたことが、ソリューションビジネスの原型になりました。
そこから、物流以外にも通販のパッケージシステムとして、システムやコールセンター、お客さまの決済サービスなど、通販のソリューションサービスをまとめて事業化したのが「スクロール360」という会社です。現在は「スクロール360」だけでも100社を超えるクライアントを支援しています。
テクノロジーが非常に注目されている領域でもあるので、スタートアップの接点や協業の可能性が多く見出されると期待しています。

インタビュアー:西村真里子(HEART CATCH)

編集・構成:細越一平(Story Design house)

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