スタートアップと静岡県内のものづくり企業で「ビート」を響かせよう

小林 俊雄氏|株式会社小林製作所 代表取締役社長 

独自技術を開発し、日本から世界へ製紙・産業機械を輸出

——貴社の事業内容についてご紹介いただけますか。

小林製作所は1947年の創業です。「紙の町」ともいわれる富士市で、製紙機械の製作を主軸事業としてきました。日本は製紙のための機械を海外から輸入していましたが、当社では独自に技術を開発し、1968年には製紙業界トップであるアメリカへ自社開発の製紙機械「ウルトラフォーマ」を輸出することに成功しました。

——それ以前にも、創業時からいろいろな技術や機械を開発されていますね。

そうですね。当時は私たちも「スタートアップ」と言ってよいかも知れません。1970年には製紙機械の他に、フィルムを製造するための産業機械を開発・製作するようになりました。紙とフィルムは、1枚のシートという点で同じです。当社が持っているノウハウでできるのではないかとチャレンジしました。VHSビデオテープなどに使われていた磁気テープや液晶画面に入っているフィルム、さらにリチウムイオンバッテリーに用いられるような高機能フィルムの製造用機械も当社で製作しています。

——開発時のアイデアはどのようにして生まれるのですか。

お客様であるメーカーさんから「こういうものを作れないか」「こんな機能をつけたい」とオーダーを受けます。そうした要望を装置へと落とし込んでいくのが私たちの仕事ですから、お客様と一緒に機械をつくっていくという感覚でしょうか。お客様のニーズに答えることを繰り返すことで、当社の開発技術は培われてきました。

連続した歴史や経験に縛られないアイディアや技術が求められている

——デジタル化の波は、貴社の70年の歴史でも大きなインパクトになっていますか?

そうですね。今後、5G(第5世代移動通信システム)が導入されていくと、やりとりされる情報量も圧倒的に増えていく。今までにできなかったようなことができるのではと感じています

——課題を感じている部分はどのようなところですか。

「プロダクト」「プロデュース」「ビジネス」の3つの側面でそれぞれ課題があります。プロダクトの面では、お客様から「IoT技術を取り入れたい」「もっと“つながる”機械がほしい」といった要望をいただくようになっています。私たちの作っている機械に今後どのような機能をつけていくかが大きな課題ですね。

——つながる、というのは?

例えば、AIによる遠隔監視やリモートメンテナンスといった部分で、現在は人手に頼っている部分をIT化したいというご要望です。今は振動計などのセンサー類も安価になってきていますから、可能性が広がってきているとは感じます。ただ、どうしてもこれまでの技術の延長になってしまうので、新しい技術でステップアップしたいですね。

——「プロデュース」「ビジネス」の面ではどのような課題を感じているのでしょうか。

製紙機械や産業機械に関しては、評価をいただいている独自技術が多くある一方で、創業から70年が経過した現在、どうしても今までの歴史や経験に縛られてしまいやすいという課題があります。その意味でも、TECH BEAT Shizuokaのように、スタートアップや若い企業との接点は刺激となります。

ビジネス面では、「サービス」での課題があると認識しています。例えば、機械の保守点検などのために多くの社員がお客様のところへ出張するのですが、海外出張も珍しくありません。当然、移動のための時間や交通費がかかってくる。例えば、お客様の工場内にカメラをつけて私たちは静岡本社にいながらリアルタイムで機械の様子を見たり、現場にいるスタッフに指示を出せたりしたら、移動にかかる時間やコストも下がり、サービスの品質も高められるかもしれません。人手に頼らないサービスの提供の仕方も考えていく必要があります。

——VRや遠隔操作技術のスタートアップもありますね。

当社にもテレビ会議室はありますが、VR技術や5Gを活用したリモート作業ができるようになればさらに便利ですよね。わざわざ出向かなくてもオンラインで機械の様子を見て「ここを直しましょう」というようなやりとりを完結できれば、業務効率も飛躍的に向上すると思います。

スタートアップと「腕に覚えのある」企業の化学反応を

——貴社と協業することでスタートアップ側が得られるメリットはどのようなものでしょうか。

当社は受託製造を得意としています。スタートアップの方が「こんなのを機械にできないかな?」と思い描いたものを実現できる知見とパワーはあるでしょう。お手伝いできることはかなり多いと思いますよ。

私たちは創業当時から海外企業と提携して技術を吸収してきましたし、積極的に協業に取り組んできました。他社とのコラボレーションで進化していくという手法は、小林製作所の遺伝子として受け継がれています。

——アイデアがあっても相談できるところがないという課題を抱えているスタートアップは多いのです。小林製作所さんのスタンスは彼らにとっても非常にこころ強いと思います。

「TECH BEAT」の「ビート」って、「叩く」という意味もあるじゃないですか。だから私たちもどんどん叩き合って、巻き込まれて、揉まれて、化学反応を起こしたいと考えています。静岡県内には「腕に覚えのある」企業がとても多い。私たち静岡県内から参加する企業の「ものづくり」も是非見ていただきたいなと思っています。そこから生まれた化学反応で新しい世界を見てみたい。とても期待しています。

——化学反応、たくさん起こしたいですね!スタートアップは「みんなで成功させる」という姿勢の企業が多いので、複数のスタートアップとの協業もできるのではと感じます。ありがとうございました!

インタビュアー:西村真里子(HEART CATCH)

編集・構成:細越一平(Story Design house)

Back to top button
Close