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レポート & コラム

Report & Column

TECH BEAT Shizuoka 2025 AFTERBURNER #2 開催レポート

TECH BEAT Shizuoka 2025 AFTERBURNER #2 開催レポート

7月にグランシップで開催した「TECH BEAT Shizuoka 2025」に続き、静岡の産業変革に向けて、業種の垣根を越えて地域のプレイヤーが一丸となって課題解決を目指すプログラム「TECH BEAT Shizuoka 2025 AFTER BURNER」。2026年2月5日(木)、静岡市のコ・クリエーションスペースにて第2弾となる「和栗協議会に学ぶ農業×オープンイノベーション実践セミナー」を開催しました。

担い手不足や価格低迷といった構造課題に対し、生産者・自治体・民間企業が連携し、和栗生産の継承や世界への魅力発信に取り組む「和栗協議会」を軸に、音楽メーカーなど、多様なプレイヤーを惹きつける活動の魅力や、静岡が誇る農産物わさび産業との対比、農業・製造業に共通するブランドづくりについて熱いトークが繰り広げられました。

登壇者

  • 間宮 純也 氏(有限会社春華堂 専務取締役/一般社団法人和栗協議会 事務局長)
  • 蓑輪 雅弘 氏(ローランド株式会社 代表取締役社長 CEO)
  • 望月 啓行 氏(株式会社田丸屋本店 代表取締役)

モデレーター

  • 西村 真里子 氏(TECH BEAT Shizuoka プロデューサー、株式会社HEART CATCH 代表取締役)
AFTERBURNERセミナーの会場の様子

モデレーターでTECH BEAT Shizuoka プロデューサーの西村 真里子 氏

地域資源を「産業」として再設計する ~ 和栗協議会の挑戦

和栗協議会で中心的な役割を担う間宮氏は、100年以上続く老舗である春華堂のルーツである和菓子に使用していた掛川栗の生産者・生産量の減少に直面する中で、縄文時代から続いてきた和栗の豊かな食文化を知り、「地域資源である和栗を未来に残したい」という想いからこの取組をスタートしました。

和栗協議会には様々な分野の人が参画しているため、個々の強みを生かして生産・技術・広報・人事・企画など分科会に分かれ、それぞれが自分事としてプロジェクトを実行できる体制を整えています。また、全国の和栗産地と繋がりを持ち、互いの良い点を学び合いながら、日本の和栗や農業の価値を向上させ、高価格で海外輸出ができるようなブランド力と、地域の食文化継承とを両立できるような仕組みづくりに取り組んでいます。

和栗協議会の取り組みを紹介する間宮氏

共創の枠組みについて語る間宮氏

業種を超えて農業と繋がる、ローランドの想い

一見畑違いの領域に見える「農業」と「音楽」を繋ぐ、ローランド株式会社。蓑輪氏が和栗協議会に参画したきっかけは、コロナ禍で「人と人との繋がり」の大切さを再認識したことです。浜松に本社を置く企業同士、以前から交流のあった春華堂の地域への想いに共感し、その呼びかけに応えて、和栗協議会に参画しました。

箕輪氏は、協議会での活動を通じて、これまで接点のなかった大学教授や僧侶、生産者などと繋がり、全く異なる分野の考え方に触れたり、思いがけず自社商品のファンに出会ったりする中で、多くの刺激や気づきを得たと言います。

計画通りに物事を進めるだけではイノベーションは起きにくい。全く異なる分野の人々との関わりを増やし、偶然の出会いが起こる頻度を上げてイノベーションを促す——。和栗協議会に異業種という立場で関わる当事者の貴重な見解をお聞きすることができました。

「つながり」をキーワードに参画の背景を語る蓑輪氏

偶然の出会いを設計する意義について話す蓑輪氏

価値は「物語」にある 〜 わさび作りの現場から

静岡を代表する農産物である「わさび」を扱う老舗企業である田丸屋本店の望月氏によると、世界的な和食ブームによる需要増に対して、わさびは澄んだ水、水温など栽培条件が制限され、生産量を大幅に増やすことが難しいため、高価格で安定して収益を得られ、生産者の事業継承も進みやすいという、農業の中では恵まれた環境にあります。

望月氏は和栗協議会の事例共有から、現状に満足して歩みを止めずに、様々な人やものから刺激やアイデアを得て、時代や環境の変化に柔軟に対応していくことの大切さを感じたといい、日本人の食の好みが多様化する中でわさびのファンを獲得し続ける試みや、徐々に台頭し始めている海外の生産地との差別化など、わさび産業が向き合うべき課題についても共有いただきました。

わさび生産者の話を聞く中で、日本の農業と製造業の共通課題としてローランドの箕輪氏が挙げたのは、「情緒的価値」の大切さ。生産現場は高品質を追及する職人的な気風が強いものの、消費者にとっては一定の基準を超えた商品の品質や性能の差異は区別しづらく、商品が生まれた背景など「物語」に惹かれて商品を手に取ります。いかに魅力的な「物語」を示せるかが、日本の農産物や製品の価値向上に繋がる重要な要素ではないか――。和栗やわさび、楽器製品の話に留まらないお話として、多くの参加者が共感して頷く一幕でした。

わさびの現状と課題について共有する望月氏

価値の伝え方を語る望月氏

共創モデルの応用 〜 「真似できる部分」をどう切り出すか

今回のお話を通じて、和栗協議会の共創モデルを他の領域に展開する秘訣として、以下の3点があるのではないか、と感じました。

  • 個人・個社の利益によらず、皆に共感してもらえる旗印を掲げて課題に取り組む
  • 活動を特定の人や地域に閉じず、多様な関わりしろを用意することで、集まった人が得意な分野で自分事として課題に取り組める
  • 成功事例と比較して、再現可能な条件・自身が取り組む領域の特異条件を見極める

和栗協議会の活動に関わる中で、当事者だけでは解けない課題ほど、関係者が日常的に情報交換できる場が必要だ、と感じた食品加工事業者の株式会社平出章商店は、県内の農産物を余すところなく使いたくとも、ジャムやピューレの加工拠点が限られ、県外で加工し再び県内に戻さざるを得ないという課題に対して、県内各地で生産者、加工業者、流通・卸売業者が参加するプラットフォームづくりを進めているそうです。

一次産業を「自分ごと」に

「食」は本来、全ての人にとって欠かせないものですが、一次産業と繋がる人や環境と距離があると「食」を取り巻く「物語」を思い浮かべることが難しく感じるかもしれません。和栗協議会は、専門分野ごとに分断されがちな人や企業同士を結び付け、一緒に課題解決を目指す中で新たな発見や繋がりをもたらしてくれる、とても素敵な活動でした。今回のイベントを通じて、和栗協議会の共創モデルから得た気づきや学びが他の分野にも広がり、それぞれの土壌で取組が芽吹く姿を見ることができれば、嬉しく思います。

最後は、和栗協議会流の掛け声「はい!和栗〜!」を合図に登壇者・参加者で記念撮影を行いました。今後も、TECH BEAT Shizuoka では、静岡県の産業に関わる様々なプレイヤーを繋ぎ、共創による新たな挑戦を後押しする機運を盛り上げていきます!

セミナー会場でのセッションの様子
左から、望月 啓行 氏(株式会社田丸屋本店 代表取締役)、間宮 純也 氏(有限会社春華堂 専務取締役)、蓑輪 雅弘 氏(ローランド株式会社 代表取締役社長 CEO)、西村 真里子 氏(TECH BEAT Shizuoka プロデューサー)
和栗協議会の「クリ」を被った登壇者の皆さんと記念撮影
和栗協議会の「クリ」を被った登壇者の皆さんと記念撮影!

▼一般社団法人和栗協議会の取組はこちら
https://www.shunkado.co.jp/waguri/