「TECH BEAT Shizuoka 2026」開幕。フィジカルAIが描く静岡の未来

| 開催日 | 2026年7月23日(木)~25日(土) |
|---|---|
| 開催地 | GRANSHIP 静岡県コンベンションアーツセンター(静岡市駿河区) |
| 出展者 | 国内外スタートアップ205社ほか、県内県外の企業・団体 |
| 協賛企業 | 129社(特別協賛3社) |
| 3日間延べ来場者数 | 14,684人 |
気鋭のスタートアップと「ものづくり県・静岡」の企業を結ぶオープンイノベーションイベント「TECH BEAT Shizuoka 2026」が、7月23日(木)から25日(土)までの3日間、GRANSHIPで開催されました。
12回目となる今回は、国内外から過去最多となる205社のスタートアップが集結。今年のテーマ「フィジカルAI」を軸に、AIやロボティクスなどの最先端技術を、ビジネスやものづくりの現場でどう活かすのか、専門家や企業、スタートアップが活発に意見を交わしました。
会場にはスタートアップの展示・商談ブースが並び、各ステージでは基調講演、パネルディスカッション、ピッチなどを実施。さらに、ファミリーで楽しみながらものづくりや環境問題を学べる企画や、最新テクノロジーを体験できるコンテンツも展開され、幅広い世代でにぎわいました。
3日間の延べ来場者数は14,684人。企業とスタートアップの新たな出会いや交流が生まれた、熱気あふれる3日間となりました。
ここからは、会場の様子を開催日別のハイライトでご紹介します。
DAY1/2026年7月23日(木)
7月23日(木)、全国各地で酷暑日を記録する厳しい暑さのなか、「TECH BEAT Shizuoka 2026」が開幕しました。
午前10時の開場とともに、1階メインステージ前には多くの来場者が集まり、オープニングセレモニーの開始を待つ熱気に包まれました。
[1Fメインステージ]オープニング
開幕を告げるオープニングセレモニーでは、TECH BEAT Shizuoka実行委員会の中西勝則委員長が登壇しました。
中西委員長はすでにAIが生産現場や私たちの暮らしの中に様々な形で導入されていることに触れながら、今回のテーマである「フィジカルAI」によって、今後さらに大きな変化が生まれることへの期待を表明。
「生産現場や暮らしの中に、AIはすでに導入されている。AIの更なる進展をきっかけとし、静岡の企業とスタートアップとのマッチングによって新たな付加価値が生まれることで、静岡の明日を創っていってほしい」と語りました。
続いて、鈴木康友静岡県知事が登壇。
鈴木知事は、TECH BEAT Shizuokaについて、「すでに首都圏に引けを取らない、地方最大のスタートアップイベントに成長している」と評価するとともに、AIをはじめとするテクノロジーの急速な進展を踏まえ、今後も県としてスタートアップや企業の取り組みを支援していく姿勢を示しました。
オープニングセレモニーの締めくくりには、今回のテーマ「フィジカルAI」を象徴するパフォーマンスが披露されました。
ステージに登場したのは、中国のロボット大手Unitree Robotics社のAIによって制御された人型ロボット。SPAC俳優と息の合ったダンスを披露し、会場を大いに沸かせました。
AIが「考える」だけでなく、現実の空間で身体を動かし、人とコミュニケーションを取りながら行動する――。そんなフィジカルAIの可能性を、来場者が目で見て体感できる印象的な演出となりました。
最先端のテクノロジーとエンターテインメントが融合したパフォーマンスに、会場からは大きな注目が集まり、イベントは華やかなスタートを切りました。



[1Fメインステージ] 基調講演・セッション
今年のメインステージの幕開けを飾ったのは、「CAIO知事が率いる「AI先進県・静岡」~フィジカルAIが創る地域産業の新時代」と題したセッション。
オープニングセレモニーに続いて登壇した鈴木康友静岡県知事は、自らCAIO(Chief AI Officer)として県庁へのAI試験導入を進め、業務効率化に加え、ベテラン職員が培ってきた「暗黙知」の継承にも取り組む事例を紹介しました。
東京大学大学院の松尾豊教授は、フィジカルAIは日本の製造業にとってまだ発展途上の市場だからこそ、大きなチャンスがあると指摘。特に静岡は、ものづくりの現場で質の高いセンサーデータを収集できる強みがあり、フィジカルAIの発展においても大きな可能性を秘めていると語りました。
会場からの「世代によるAIへの温度差をどう解消するか」という質問には、AI導入には「意思決定」が重要であり、CAIOを置いて組織として推進する体制が必要と回答。さらに、データを「血液のように流し、循環させていく」ことの重要性や、次世代を担う人材育成についても語られ、ものづくり県・静岡とAIが生み出す新たな可能性を考える、示唆に富んだセッションとなりました。

初日メインステージ続いてのセッションは、「フィジカルAIの心臓部:国産LLMが現場の「相棒」になる日」。
Gen-AX株式会社の砂金信一郎氏が、これまでのAI社会実装の事例を紹介しながら、国産LLMの可能性と今後の展望について語りました。
すでにコールセンターでは、AIオペレーターとして実用化されている事例を紹介。さらに、フィジカルAIが試行錯誤を重ねながら自ら進化していくプロセスは、製造業における「改善活動」と共通しており、初期段階では人間がAIをサポートすることで、学習や成長を加速させることが重要だと説明しました。
また、日本語は世界的に見て少数言語であるからこそ、日本語に最適化されたLLMの構築が日本独自の強みとなり、グローバル市場での差別化につながると指摘。国産LLMが、現場を支える「相棒」として活躍する未来を示しました。

続いてメインステージでは、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社によるスポンサーセッション「AIで起こしたイノベーションと導入前後の事業変化ストーリー」が行われました。
AIを活用してイノベーションを推進する株式会社スカイシステム、株式会社アイズ、そしてアマゾンウェブサービスジャパン合同会社の経営陣が登壇。AI導入に至った背景や、導入後に生まれた事業の変化など、各社のリアルな事例が紹介され、会場では熱心に耳を傾ける来場者の姿が見られました。

午後に入り会場の熱気がさらに高まる中、社会的関心も高い「自動運転」をテーマに、「静岡/日本発!世界をリードする自動運転:地域交通から自家用車まで、社会実装の全貌」が開催されました。一般社団法人全自連 理事/株式会社自治体総合研究所 代表取締役 池上明子氏、スズキ株式会社次世代事業本部 本部長 藤谷旬生氏、国土交通省総合政策局 モビリティサービス推進課長 星明彦氏が登壇。国、地方自治体、メーカーそれぞれの立場から、自動運転の現在地と社会実装に向けた課題、今後の展望について議論しました。
2030年までに自動運転車1万台の実現を目指し、世代を問わず移動の制約をなくすとともに、物流・人流の最適化を図る構想も紹介。さらに、自動運転を地域再生の起点とし、メーカーとの連携によって地域共創を進めるなど、自動運転を「移動手段」にとどめず、地域の未来を変える存在として捉えるビジョンが示されました。

続いて初日のメインステージを大いに盛り上げたのが、「フィジカルAIが創る「未来の街・生活・仕事」~NVIDIA・Woven by Toyota・タミヤ、それぞれの視点から描くリアル空間の知能化~」。
世界を舞台に活躍する3社のキーパーソンが登壇し、同時通訳を交えながら、静岡のものづくりとフィジカルAI、ロボティクスの未来について議論しました。
NVIDIA Corporationの平野一将氏は、製造業におけるAI活用事例として、Jetsonを活用した株式会社タミヤの自動運転ラジコンを紹介。楽しみながら技術を学び、人材育成にもつながる取り組みとして、その可能性を示しました。
ウーブン・バイ・トヨタ株式会社のトム・スチュワート氏からは、強化学習・模倣学習の実例として、きゅうり300本を切断してデータを収集したユニークな取り組みも紹介。AIやロボットが現実の生活や仕事に入り込んでいく未来を、具体的にイメージできる内容となりました。
また、製造業や農業など「現場」が豊富な静岡は、フィジカルAIの実装に適した地域であることも共有。現場で生まれるデータをいかに活用するかが、日本の競争力を左右するというメッセージに、会場は大きな期待を寄せました。





例年多くの観客を集める人気セッション「ON-SITE Xがつなぐ共創モデル。地域から人と未来を創る」では、加和太建設株式会社、木内建設株式会社、須山建設株式会社の各代表が登壇し、フィジカルAIの取組を紹介しました。これまで可視化されにくかった現場の「暗黙知」をAIでどう残し、次世代へつないでいくかを議論。現場の面白さやものづくりの魅力、各社・各地域ならではの技術やノウハウを未来へ継承する重要性について、活発な意見が交わされました。
後半は学校法人CoIUの井上理事長をお迎えし、地域サステナビリティを軸に、自然資本を活かした地域経済における循環モデルや共創人材の育成についてお話しいただきました。
地域が持つ資源や可能性をどのように次の世代へつなぎ、新たな価値を生み出していくのか。地域から人と未来を創るための実践的な取り組みについて、参加者とともに考える機会となりました。


DAY1最後のメインステージを飾ったのは、スズキ株式会社 代表取締役副社長・石井直己氏による基調講演、「取り戻せ!新興国魂~インドから教えてもらった大切なこと」。
日本経済が成熟期を迎える一方、著しい成長を続けるインド市場にいち早く進出し、ともに成長してきたスズキの歩みを紹介しました。現地の文化を尊重しながら、役職に関係なく共に働く「ジャパニーズワーキングカルチャー」を導入し、現地の人々から感謝されたエピソードも披露。
さらに、起業家支援を通じて農村部に中小企業を生み出し、所得格差や都市集中の是正を目指す取り組みにも言及。インドから学んだ挑戦する姿勢を「新興国魂」として日本にも取り戻し、再び成長に向けて挑戦することの重要性を力強く訴えました。


ステージを締めくくったのは、静岡県立清水南高校芸術科演劇専攻の生徒による、SPAC演劇「オセロ」。
「信頼を得る指導者とは何か」という深いテーマを、若い感性と熱のこもった演技で表現しました。会場は生徒たちの迫真の演技に引き込まれ、初日のステージを印象的に締めくくりました。


また、初日の夜、TECH BEAT Shizuoka恒例の、協賛企業、スタートアップ出展者、来賓に限定した交流会が和やかに開催されました。


[1Fミニステージ]セッション
今年のTECH BEAT Shizuokaでは、会場1階大ホール出展フロア入口付近にミニステージを設置。連日、多彩なトークセッションやピッチが行われ、立ち見が出るほどの盛況となりました。
23日(木)、初日のトップを飾ったのは、「若手経営者の考える“イマ”と“ミライ”」。
地元・沼津高専出身で、AI開発などに取り組む学生起業スタートアップ4社の若手経営者が登壇し、ビジネスの現場で直面した苦労やプレッシャー、世代間ギャップについて、それぞれの経験を交えて語り合いました。
ビジネス経験や実績がない中、自らの知見を武器に信頼を築いていく難しさや、これからの日本に必要な変化についても意見を交換。若い世代ならではの視点から、新時代のビジネスの在り方を考えるセッションとなりました。

「SHIZUOKA INBOUND TOURISM INNOVATION 2026~自治体×スタートアップで拓く、インバウンド課題解決への次の一手~」では、インバウンド誘致に課題を抱える県内自治体と、課題解決に取り組んだスタートアップ5社が登壇し、それぞれの実証成果を発表しました。
海外からの観光客がどのような手段で地域を訪れ、何を検索したのかなど、マクロ・ミクロ双方の視点から観光客の動きを分析。さまざまなアプローチによって地域の現状を「見える化」しました。
そこで得られたデータをもとに、各自治体が持つ地域資源や強みを生かしながら、次の施策へつなげていくことで、より観光客のニーズに応えられるのではないか――。データを活用した地域観光の新たな可能性を感じさせる、期待の高まるピッチとなりました。

[9F サブステージ]セッション
会場9階の「サブステージ」では、1階メインステージに加え、連日多彩なセッションが行われ、多くの来場者を集めました。
初日午後には、「静岡県パブリックピッチイベント『自治体×スタートアップで創る、地域の未来』」を開催。鈴木康友静岡県知事をはじめ、県内23市町の首長が一堂に会し、自治体とスタートアップの連携について意見を交わしました。
冒頭のトークセッションでは、鈴木康友静岡県知事も登壇し、AIの活用や県内外のスタートアップとの連携をテーマに議論。その後、県内外のスタートアップ10社が、23自治体の首長に向けて自社の技術やサービスを紹介しました。
防災DX、AI電話対応、AI配車サービスなど、地域や行政が抱える課題に応える多彩なソリューションが次々と披露され、すでに全国の自治体で導入されている事例も紹介されました。
自治体トップとスタートアップが直接向き合う今回のピッチ。行政サービスを刷新し、地域の課題解決につなげる新たな共創の可能性に、会場は大きな熱気に包まれました。満席に加えて多くの立ち見が出る盛況ぶりからも、静岡の地域課題とビジネスの可能性への関心の高さがうかがえました。





